由井啓之氏インタビュー

何百万円しても「ダメなものはダメ」
――タイムドメイン理論を開発するに至ったキッカケは?
オーディオメーカーにいた頃、従来の理論を使って開発をしていましたが、なかなか良い音にならなくて、その試行錯誤の繰り返しのなかで何かがおかしいと気づきました。「従来の理論が間違いじゃないか」と。そこからタイムドメイン理論がスタートしました。
オーディオマニアやメーカーサイドは、アンプやスピーカーの組み合わせ次第でいい音が出ると思っています。例えば、お金があって高いアンプを買えば良い音になると思っています。メーカーにいた頃は何百万円のアンプやカートリッジを買ってくれますので何種類も試すことができたのですが、やはり「ダメなのものはダメである」とすぐに理解できてしまいました。オーディオマニアの方でも一生かかってもわからないことが、わかってしまったのです。
では、どうしたら良いのかを考えるのですが、そこでタイムドメイン理論に基づいた「GS-1」というスピーカーを創ることになるのです。GS-1は200万円で販売しました。もちろん評判は良かったんです。しかし、万人向けのものではない。それで皆が買えて皆が使える、本当に良い音で聴けるものを20年近く考えていました。
諦めた時にひらめいたもの、それが創造ということ
――タイムドメイン理論の発想の根源は?
それは今の企業や大学の仕組みではクリエイトできないんです。というのも、改善・改良までしかできないのです。〈創造の原則〉というものがあり、とことんやり尽くす、それでダメなら別の方法を試してみる。そして何度もこの繰り返しをして、最後にギブアップした時にパッと思いつくのです。そのパッと思いついたものは、それまでのものとはまったく違うものになるのです。それが〈創造〉なんですね。そのようなことは世界でも日本の企業でもできません。企業でも大学の先生でもできるかどうかわからないことは、やらせてくれませんよね。また、できることしか、やらないです。そのような環境ではクリエイトというものは生まれないのです。
クリエイトについていろんな方々が本を書かれたりしていますが、最後には〈禅の世界〉だと言ってます。発明というのは寝食を忘れて没頭し、諦めた時にパッとひらめく。ある本に書かれているのは、「あらゆることをやってみたがダメだと諦めた時に思い付きひらめく」、「このひらめきには鋭い喜びがある」、「今までの疑問が一気に解け繋がってゆく」、「押し入れを開けると、そこに重要なものすべてが揃っている」と表現されています。そういった過程がないとクリエイトできないと思うんです。
私もいろいろと試行錯誤し、諦めた時にひらめいたんですよ。改善・改良だけでは、あのような筒型(=スピーカー「Yoshii9」)にはなりませんよね。それがクリエイトですよね。ある意味で突然変異に近いんです。進化がそうですよね。全然違うものが生まれるわけですよ。私は猿が人間になったとは思いませんが(笑)。
全ての人が欲しいと思うスピーカーは
――世界中で販売されているタイムドメイン・スピーカーですが、一番反響のある国はどこでしょうか?
どこの国でも良い反響をいただいてます。古今東西、歴史をさかのぼって人種・性別・年齢・国籍など関係なく、すべての人が欲しがる商品というのは〈タイムドメイン・スピーカー〉しかないと言ってもらっています。自然なものや癒されるものというのは、みんな本能的に知ってるんです。
企業見学で中学校の生徒さんが来社した時に感想文を書いてもらいました、「自然で良い音」だとか「感激した」とか、嬉しいことをいっぱい書いてもらいました。中学生でもわかるんですよ。人間だけじゃないですよ、猫や犬だってそうです。赤ん坊に到ってはそれは顕著ですね、不自然なものは本能で警戒しますから。自然であれば安心しますよね。そういう商品は他にないでしょ。食べ物にしても、ファッションにしても、車にしても。(タイムドメイン・スピーカーは)みんなが欲しがるんです。
従来の理論は<自然>ではない
――タイムドメイン・スピーカーに感動するユーザーは、より自然に近づきたい?
そうですね、そういうものを求めているんですよね。そうそう、誰にも言ったことがないのですが、インドへ行ったときの話です。インドのとある場所で、ものすごく綺麗な場所があるんですよ。そこは河も底まで透けて見えたり、人工物がなく美しい花が咲き乱れたり、鳥たちが飛んでいたりとインドの中でも特に美しいところなんです。そこで、なんでこんなに綺麗なんだろうと考えました。花が綺麗なのは蝶や小鳥を呼び寄せるためですし、オスの鳥が綺麗なのはメスを呼ぶためですよね。そうするとね、小鳥が美しいと思うのと、私が美しいと思うのと同じということになりますよね。これらは利益を求めて作られたものではなくて、生まれた時からあった本能ですよね。このことはとても重要で、生きるために必要なことであって、神様が生きるために与えてくれたことなんです。
今の世の中はそれを忘れています。損か得だけで生きてますよね。神様が与えてくれた大事な本能を無視して生きてるでしょ。これはアカンなと、そういうふうに思ったんです。本能に従ったものだから、みんな欲しがって当たり前なんですよね。だからタイムドメインで癒されるということなのです。
でも、不思議でしょ? 小鳥が美しいと思うのと、人間が美しいと思うのと一緒なんですよ。小鳥と育った環境や、受けた教育はまったく違うのにね(笑)。ただ本能に従っているだけなんですよ。小鳥も人間も美しいと感じるのは一緒です。そんなことをインドに行ったときに思いました。
一番大切なのは〈自然〉であること。従来の理論では自然ではない。だから新しい理論になったわけです。それまでは「周波数理論」の1つしかありませんでしたし、新しい理論に名前を付けなければいけませんので、「タイムドメイン(時間)理論」ということになりました。
例えば、(コンコンとテーブルをノックして)こういう音を周波数で分析できるとしても、実は何も再現できていないのです。分析と再現では違いますし、そこが間違いだと思うわけです。コーヒーにしてもそうです。タンパク質が何%で、糖分が何%、水分が何%と分析したところでコーヒーにはならないんです。
多くの女性は心から音楽を聴こうとする
――札幌試聴会の席で、「不快な音は脳の外側で遮断して、心地よい音は脳の奥へスッと入ってくる」とご発言されていましたが?
それは心理学でも実験をされてる方がいまして、ある意味では常識になっているんです。ストレスの研究をされてる方などがそうです。脳のどの部分で反応してるか見れるでしょ。
オーディオマニアの男性は、タイムドメインを買うまでは機材にこだわられていて、アンプやカートリッジに固執してました。それは「頭の先」で音楽を聴いてるということです。心から聴こうとしてないんですね。一方、女性は心から聴こうとする方々が多いので、スッと入っていけるのです。ご夫婦でタイムドメインを聴かれた時には、それが顕著です。旦那さんはそれほど良いとは思わないのですが、奥さんの方がすっかり気に入ってしまい、旦那さんは「自分の今までの聴き方が間違ってたのでは」と思うんです。
アンプやスピーカーの組み合わせで良い音だと思っていた旦那さんがどんなにそれの購入をお願いしても、奥さんとしては(従来のオーディオが)自然な音ではないので嫌がるということです。だから、そういう男性は心から音楽を聴いていませんので、音楽を聴いて感動するということはないのですね。
音楽を聴いて感動してたらストレスにならないし、どんどん気分が良くなっていくわけです。タイムドメインのスピーカーは何時間聴いても疲れないですし、何度でも聴きたくなるんです。これはそのことをハッキリと証明してると思います。
――たしかに、オフィスで普通のラジカセからMarty101に替えたら、女性社員からとても好評ですね。
そうでしょ。女性には理屈抜きで聴いてもらえますからね。マインドテストではありませんが、先入観なしに好ましいものは受け入れますし、その逆は受け入れませんよね。我々の製品を女性の方に多く買っていただけているのも当社の意図が実現されているということです。
タイムドメインのホームページには、「今までオーディオに興味のない方にこそ聴いてもらいたい」と書いています。というのも、オーディオマニアなんて放っておきなさいと(笑)。あの人たちは〈旧大陸〉の人たちで、我々は新大陸に〈新世界〉を創っていくんだと。サンプル調査しますとオーディオマニアは100人に対して1人くらいで、残りの99人はオーディオ店に行ったこともないし、オーディオ雑誌も読んだことがないんです。その99人に聴いてほしい、喜んでほしいと思います。いずれあの人たちも旧大陸を離れてこっちに来ますから。理論が間違いだと革命を起こしたところで、世界は変わりません。必ず新大陸にやってきます。
なかには、昔オーディオを趣味にしていた高齢の方もいらっしゃいますよ。昔はたくさん機材を買って、オーディオを楽しんでいましたが、今はもうやっていなくて。それでタイムドメインを知ってから、また音楽を聴くようになったとおっしゃっていただいています。タイムドメインを創った時に、高齢の方に聴かせてみたんです。残りの人生を少しでも楽しいものにしてほしいですからね。そうしたらなんと、感謝のお手紙をいただいたり、生き甲斐ができたとおっしゃってくれて。親子でいらしゃることもありますね。若い20〜30歳のお子さんが、昔オーディオをやってたお父さんにタイムドメイン・スピーカーがあると言うと「そんなハズはない、どれどれ」と。で、実際に聴かれて驚かれるということがあるんです(笑)。
中途半端なものが、タイムドメインだと言われては困る
――それでは最後に、Marty101のご感想をお聞かせください。
うちの基準はクリアしています。タイムドメインのライセンス契約を結ぶかどうかは、最終的に私がその音を聴いて判断します。実は、意外と基準をクリアしてないのがあるんです。そういうのは契約していません。実は、オーディオメーカーはあまりコンタクトして来なかったんです。彼らではタイムドメインはできませんし、もし、彼らがうちと契約を結ぶことになったら、今までのお客さんを裏切ることになりますからね。今まで従来理論の高価なオーディオを売ってきたのに、今更タイムドメイン理論の新しいスピーカーに切り替えられない。だからそういう事情を含めて、オーディオメーカーとしては中途半端なものしか創れないんです。そういったものには一切OKを出していません。中途半端なスピーカーがタイムドメインだと言われては困りますので。




